『不思議の国"中国"のソーシャルメディア事情』(対談 福島 香織 氏 × 福田 淳 氏) | Talked.jp

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対談  福島 香織 氏 × 福田 淳 氏

福島:おもしろいのは、企業とか政府クラスのインテリジェンスがやるだけならわかるんですけど、庶民生活でも結構あって、友達とかが・・・。

福田:13億総、みんなスパイ?

福島:例えば、普通に友達が家から出掛けるときに、お向かいのおばあさんが「きょうはどこに行かれるんですか」とか聞くんです。「きょうはこういう仕事でここに行くんですよ」って普通に答えますよね。日本だと何の変哲もない普通の世間話です。ところが、おばあさんとの話を切り上げた後、その友達が私にこっそり「あのおばあさん、実は息子が勤めている企業がこれこれこうで、多分ね、僕の行き先を調べているんだと思う」って打ち明けるわけ。「それを把握していたから、ああいう風に答えたんだよ」って。「普通の人でもみんな、そんな用心をしながら生きているんですか?」って驚いたら、中国人っていうのはそうなんだ、と。あいさつの中でも、なんか普通に、割と根掘り葉掘りいろんなことを聞いてくる・・。

福田:こっちは、単なる世間話と思っちゃうけど。

福島:実際は誰かに頼まれていたりとか。本当に、砂粒を集めるような情報収集をしているんです。例えば、運転手さんとかも簡単な報告をするとお金がもらえるような網の目がものすごく細かく張られている。それはやっぱり、同郷だとか、ネットワーク社会なんですよ。だから、微信と微博っていうのは、ものすごく中国人の性格に合うんですよね。

福田:もともと人的ネットワーク社会。そういうのにプラスして・・。

福島:本当のインターネットが加わっちゃうから、そういう口コミとか、情報のやり取りっていうのは特にすごいんですよね。

中国では何よりも人脈が重要

福田:福島さんの著書「中国のマズゴミジャーナリズムの挫折と目覚め」の中にも、結局、記者もリベート社会っていうような記述がありましたよね。

福島:何でも個人の関係っていうところに落とし込んじゃうんですよね。つまり、組織と組織がやり取りすると、賄賂とかになっちゃうんですけども、全部、個人関係にすれば問題ない。おまえは友人だ、みたいなの。朋友(パンヨウ)って言葉には、なかなかいろんな含みがあって・・・。

福田:パンヨウ。

福島:友達ですね。朋友ですよね。パンヨウっていうニュアンスがあって、あと、ほんとに仲良くなると、それが兄弟(ションディ)になるわけですよ。

福田:ションディ?

福島:ションディっていうのは兄弟ですね。義兄弟も含めて。私なんかは女の子だから、小妹(シャオメイ)とかって呼ばれたりするわけです。妹よ、と。要するに、それはもう、準家族のぐらい近さ。パンヨウからションディ、ジエメイ(姐妹)の疑似家族扱いになるんです。人間関係にすごいレベルがあるんですけども、家族とか、ファミリーみたいな付き合いまで深まると、それはもう組織を超えて、相当強い関係になっちゃうらしいですよね。

福田:ハリウッドでは、世界中から自分はイケてるって思ってるその時々の最先端企業が「コンテンツ下さい」ってやってくる。ハリウッド側も「じゃあ、最低保証100ミリオン(約100億円)ぐらいかな」とか吹っかけてくる。 多少交渉はするんだろうけど、たいていハリウッドって競合も少ないし折れる必要もないし、焦ってもいない。だから、結局は新興企業がハリウッドに貢いじゃう。もちろん、ハリウッドと契約できるっていうブランディング効果ぐらいは、地元でもあるのかもしれない。いや、それにしても高いわけです。結局は、たいていリクープ(費用回収)しないで終わるんですね。僕はそういう連中がみんな惨敗しているのを20年以上目の当たりにしているから、きっと中国企業との交渉ってそんな簡単じゃないとわかってはいたんです。
日本で上場を果たしたいろんなネット会社から、「どうやって中国攻めたらいいの」ってよく聞かれるのですが、中国人ビジネスマンとの付き合い方の作法について、どんな指南がありますかね?

福島:例えば、中国で高い手数料を取ってコンサルタントをやっている人はたくさんいるんです。この人たちが何を売りにしているかって、結局のところ人脈なんですよ。共産党の誰それに会わせてやると・・。中国は地方主義ですから、基本的に企業は中国全土に大展開って無理なんですよ。ものすごく利権の対立があるので。

福田:一つ一つに対立があるらしい。