『不思議の国"中国"のソーシャルメディア事情』(対談 福島 香織 氏 × 福田 淳 氏) | Talked.jp

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中国は“洗練された独裁国家”

福田:今のところ、もしかしたら、中国政府、共産党政権がネットのマーケターとして一番優れているかもしれませんね。

福島:それは、よく言われます。本当に中国のネットコントロール、世論コントロールっていうのは、みんなが真似したいものかもしれないんですよね。

福田:それは、偉い人が指示を出しているのかもしれませんけども、実際、中国共産党にネットに長けた有名な人って誰かいるんでしょうか。例えば、ブランドの世界だと、佐藤可士和さんがやるとCISと企業価値が上がるみたいな話がありますが。

福島:このシステムを作り上げたのは、元北京郵電大学学長の方浜興(ファン・ビンシン)なんですよ。グレートファイヤーウォール(GFW)の父と呼ばれています。GFWって中国でいうところの、ネット統制の要で、中国のネットを巨大なイントラネットみたいにしているシステムなんです。

福田:やっぱり、そういう人がいるんですね。

福島:ただ、実際の基本技術面はどこがやっているかって言ったら、私の聞いた限りではアメリカ企業なんですね、全部。

福田:それすごい話ですね。

福島:例えば、金盾工程(ゴールデンシールドプロジェクト)っていうのを90年代から中国の公安がやっていて、試行錯誤を重ねて今のネット検閲統制システムっていうもの作り上げたんですが、それは世界で最も洗練されたシステムだと。最初はね、例えば、この言葉を入れたらシャットダウンとか・・。

福田:そういうレベルだった。

福島:ところが、今は、例えば、天安門って入れたときに、自分がネットコントロールされているっていうのがわからないレベルの検索結果が出てくるわけですよ。

福田:ちゃんと文脈をつかむ。

福島:そうなんですよ。要するに、この人はこういうことを調べているなっていうのが、全部蓄積されていて、例えば、IPアドレスかなんかで、この人は実は外国人だから、そんなにコントロールしなくていいとか、この人は運動家で一番危うい人だとかっていうのが、検索結果でわかるようなシステムっていうのが、すでにできているっていうんですね。

福田:おもしろいなあ。

福島:人によっては、世界中のありとあらゆる国家の指導者がうらやむ最も洗練された世論誘導のシステム、ネットコントロールのシステムだと評していて、ジャスミン革命前の中東なんかでは、中国からそのシステムをまるごと輸入しようっていう話まで出ていたわけですね。だから、もっと早くに輸入していたら、ジャスミン革命は起こらなかったかもしれない、みたいな冗談も出るのだけれど・・・。

福田:怖い話ですね。だけど、すごいな、それ。

福島:香港の場合、もちろん、全然気づかないでコントロールされている人たちが大多数なんだけれども、その一方で、ネット世論というのはそういう仕組みで誘導されているってわかっている人たちもいるから、それを乗り越えて何かをやろうみたいな動きも当然あって、その他にも国家レベルのサイバー攻撃とか、今、一言で言い切れない複雑なネット環境があるわけですよね。だから、ネットのおかげで民主化が進むとか、無血革命が可能だとかって、安易には言えない。

福田:そんな楽天的なものではない。

福島:まさしく今、寄せては引きというせめぎ合いの中で、どう展開するかわからないなと。ただ、一つ言えるのは、みんな、前よりは絶対良くなっていると思っているはず。

福田:なんか自分が興味持つまでわからなかったですけど、中国っておもしろい。

福島:あんなにね、洗練された独裁国家はないんですよ。

福田:見出しになりそうな表現ですね。

福島:間違いなく一党独裁なんですよ。その一方で、あんなに経済が自由で、みんなフリーダムでやりたい放題やっている国でもあるんですよね。

福田:どんな管理能力なんだっていう話ですよ。

福島:ものすごく不思議な国ですよね。

福田:本日は貴重なお話し、ありがとうございました。

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