『不思議の国"中国"のソーシャルメディア事情』(対談 福島 香織 氏 × 福田 淳 氏) | Talked.jp

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対談  福島 香織 氏 × 福田 淳 氏

独自に研究開発する素地がない

福田:ちょっと話はずれますが、中国はある限られた工期で安く大量生産できるってことをひとつの売りにしてきたと思うんですが、多少、国としての体裁が変わっていく中で、少しは人件費も上げなきゃいけない、経済発展も考えなきゃいけないっていうときに、世界の中でのポジショニングについて、今後どういう方向目指すんでしょうか? たくさん人口がいるから、たくさんモノ作ろうよってことなのかもしれませんが、欧米を中心に世界的には「もうそんなにたくさん、モノは要らない」って社会が広がっているわけじゃないですか。毒入りギョーザ事件とか、ロゴが曲がったアップル類似品とか、中国で作るものの駄目さ加減って、ほんの一部の話なんですかね? もうちょっとインテレクチュアル(知的)なものを作ろうっていうことを、国策として考えたりしないんでしょうか。

福島:うーん、事実上、作れないっていうのはあると思うんですよね。要するに、今、中国では、例えば、企業の売り上げの何パーセントを研究開発に費やそうというようなことを一生懸命やっているけれども、できてないんですね。これはもう、中国人が駄目とか、そんなんじゃなくて、中国の体制上の大きな問題だと思うんです。特許とか研究とか、あるいは学問っていうものが発展する素地が今のところないわけですよ。こつこつ何かを成し遂げる姿勢がないと、やっぱり優れたものはできない・・。

福田:民度と言うかね。

福島:確かに、民度って言ってもいいのかな。例えば、今、中国が独自開発とか、特許とかって言っているものって全部パクリなんですね、新幹線なんか特に。中国では法律で「パクってもいい」ってことになっているわけですね。

福田:なっているんですか。さっきの法の裏をかくことが当たり前みたいなことが・・。

福島:だから、特許に関しても、中国の研究で改善したものは、中国に特許があるみたいなことをちゃんと決めていたら、例えば、ねじの頭を丸から四角に変える程度で、全然たいした改善でも何でもないものでも、「それはもう中国のものだ、メイド・イン・チャイナとして、アフリカに輸出します、」みたいなことを、もう法律というか、国の体制としてやっちゃっているんで。

福田:中国の中だけだったら従属できるかもしれませんよね。だけど、欧米マーケットに向けて中国が何か発信できるようなサービスとかは少ないですよね。ネットでもアーキテクチャーから何まで、真似しているわけですよね。

福島:そのとおりですね。

福田:Facebookにまったくソックリなのは人人網(レンレンワン)だし、Twitterにソックリなのは微博(ウェイボー)だし、今度はLINEにソックリなWeChat(ウイチャット)まで現れた。全くおんなじですよ。イノベーションゼロですよ。

福島:だから、中国でノーベル平和賞や文学賞は出ましたけれども、コアな部分でのノーベル賞が生まれないって言うのは、やはりそういうところにあって。自由な研究とか、難しいですよね。権力によって、自分の生み出したものが奪われる世界ですから、あの国は。そういう意味では、権利が守られるとか、司法が独立してきっちりしているとか、そういったものが整ってないところでは、イノベーションとか無理。それは能力が劣っているとかじゃなくて、今の政治のシステムの中ではちょっと厳しいだろうなって・・。

福田:となると、アップルのようなイノベーションが起きない構造の社会を、先進国である欧米や日本が脅威がる必要があるのでしょうか。単に消費だけを考えるなら、人口が13億人もいることのマーケット性はあるかもしれませんけど、

福島:確かに、イノベーションは起きないけれど、もともとあったものの廉価版を作って、広く消費させることは得意なんだと思います。だから、全部製造が中国になってしまう、と。それは輸出っていうか、海外が消費してくれる前提で作られてきたんだけれども、だんだん中国の市場が成熟してくれば、13億人の1割でも、日本の人口より多いわけですから、そこそこのマーケット性っていうのはあるんです。みんなそこに中国進出の意味を見出すんでしょうけども、でも、あそこは国家がパクリを、まあパクリって言うとあれなんですけど、要するに、技術を奪って独自化してしまうことを、法律上っていうか、システムとして認めているんで、日本も進出した段階で技術やアイディアを奪われることについては、それなりの覚悟はしておくべきですよね。