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ベストセラーでも実は“印税”は低い

“泥船”の出版をどう変える? 元ベストセラー作家が目指す「印税率5割」革命とは(前編)   Talked.jp

福田:本題に戻りますと、田中さんの取り組みの「印税率5割を目指すべき」というのは、まさにそうだなと思います。今、本を出すことは趣味の域になっていますもんね。ITの社長とか、事業をやっている人が名刺代わりに出すような……。田中さんはこういう風潮に対して、いろいろと思うところがおありになったのでしょうか。

田中:そうですね。僕は2017年に電通を辞めて、3年ぶらぶらしていたんですけども。

福田:結構、ぶらぶら長いですね(笑)

田中:ぶらぶら長いです。最初の1年は、ハローワークへ行って、失業保険給付金をもらって、それだけで生きていましたから。

福田:僕も2度、会社を辞めているんですけど、両方とも当て所がなく辞めてるんですよ。でもそういう人は珍しくて、大抵は何かブリッジをつくって、次の当て所があって辞めるじゃないですか。だから田中さんの思い切りも、すごいですよね。

田中:24年間電通に勤めていて、「どうもこれ、向いてないんじゃないかな……」って、なんとなくぼんやり思って。

福田:気づくのが遅いという(笑)

田中:(笑)「何かオレ、向いてへんのちゃうかな」と思った時、2016年の11月に早期退職制度の募集を見まして、それで12月にはもう辞めちゃいました。

福田:じゃあ全然、コロナの前ですね。そこから3年ぶらぶらされて起業ということは、コロナになってから「やるぞ!」というタイミングですか。

田中:そうなんです。逆に言うと、「やるぞ!」ってなった瞬間の春にコロナになりました。経緯としては、2019年に生まれて初めて書いた自分の著書が、紙と電子を合わせて20万部くらい売れたんです。

福田:すごいですよね!

田中:でも、それでもやっぱり印税は1割じゃないですか。だから「20万部ぐらい売れても、お金ってこれぐらいしか入らへんのや」と思いまして。

福田:でも初めての著書で20万部って、それだけですごくないですか。今、初版3000部とか、そんな時代に。

田中:まあ、そうなんですよね。ところが3年間ぶらぶらしていたもんだから、20万部分の印税を全然収入のない3年で割ると、僕の年収は500万円ぐらいだったんです。これはなかなか厳しい。家族も抱えていますし。 でも本が売れている瞬間は、「Amazonの和書総合1位!」とか「トーハン週間1位!」とか、「オレ、ベストセラー作家やん」と思って、トーハン1位の切り抜きをお母ちゃんに送ったりしましてね。親も「お前もベストセラー作家やなぁ」っておだてるし、友達もやってくるんですよ。「新聞見たよ」「飲ませてくれよ」って。「鳥貴族やったら行けるけど」みたいな(笑)みんな、さぞ僕が金持ちになったと思うんですけど、違うんです。3年に延べると年収500万。家族でなんとか生きていけるっていう金額ですよ。

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