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工芸品のような本をつくりたい

“泥船”の出版をどう変える? 元ベストセラー作家が目指す「印税率5割」革命とは(前編)   Talked.jp

福田:僕の場合はというと、じつは4冊目の著書を某大手出版社から出す予定だったんですよね。ところが担当の人から、「福田さんのフォロワー数はどうですか」とか「帯に有名人をもってこれますか?」とか言われて、ものすごい違和感を持ったんです。僕は芸能事務所をやっているから、有名人をもってくることはできるけど、「いや、そうじゃないんだよ!」と。「そんな助けは、自分の本にはいらないんだよ」と。同時に、「そうか、一人出版という形態も今はあるからな。それに世の中こんなに気候変動が世界的な問題になっている中で、紙を刷るというのもどうなんだ?」とも思いました。なので「出版って、kindleで全部できるんじゃないの?」と思ったことがきっかけです。そのあとで縁あって、創業43年の歴史がある高陵社書店という出版社を買収することになったので、「自分の本は自分のところで出す!」と、大川隆法への道を歩むわけなんです(笑)

田中:そんな道が(笑)

福田:「誰の意見も聞きたくないし、自分の思う通りに出したい!」と思ったんですね。パンク精神ですよ。今はちょっと考えを発展させて、「kindleで出しても意味ない本を出そう」と考えつきました。例えばアートとデザインのジャンルでは、3万円の豪華本って、あるじゃないですか。デザイン会社とか洒落たカフェに必ず置いてあるアンディ・ウォーホルの本とか。ああいうのを出したいと思っているんですよ。「黒川紀章さん全仕事集」みたいな……。と、いうふうに考えているんです。出版業界って変化を拒み、そのまま地盤沈下していくだけでしょう。いま構造を変えていかないとダメですよね。

田中:今はいい紙で、すごく重たい、豪華本を出すことも考えておられる、と。そういえば以前すごく感心した話に、「馬は競走馬しか残らない」というのがありました。「どういうことですか」って、教えてくれた人に聞いたんですけど、馬って昔は全部、生活の仕事を担っていたんですよね。人を乗せたり、荷物を運んだり、畑耕したり。ところが自動車やトラクターができて、馬は全部いらなくなった。じゃあ、地球上から人間が飼っている馬がなくなるかといったら、今はものすごく高価な、美しいサラブレッド、競走馬だけが残りました。だから本も同じように、いつか減っていくと僕は思います。

福田:面白い。

田中:紙の本は、強烈に減っていく。けれどそういう、絶対に手元に置いておきたい工芸品のような、3キロくらいあるようなすごい印刷の本は残ると思います、サラブレッドとして。

福田:ものすごく美しいエピソードで、今お聞きして、大好きになりました。どこかでパクって言っていいですか(笑)

田中:僕もこれ、受け売りですから、使っていただいて大丈夫です(笑)

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