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マスマーケティングを壊せ

“泥船”の出版をどう変える? 元ベストセラー作家が目指す「印税率5割」革命とは(前編)   Talked.jp

福田:拝見した田中さんのプロフィールに、「6000冊の本を読んだ」とあって、そこもちょっとおこがましいんですけど、自分との共通点を感じました。僕も、中学生のときに読んだガルシア・マルケスのコラムの中に、「幼少期に図書館にある全ての本を読んだ」と書いてあったことから、真似しよう!と思ったんですよ。赤川次郎とか星新一とか、最初は読みやすいものから入って、でもそれも面白いんですけど、「これシリーズまで全部読んだら、一生かかっても図書館制覇できないな」「代表作3冊でいいな」と。そこからは三島由紀夫から安部公房から、ラテンアメリカ文学から、アラン・ロブ=グリエからチョムスキーから全部読んで。それが今の人生の、全部の土台になっていますね。

田中:分かります。

福田:例えばYou Tubeでどれぐらい深い知識を得られるのかと言ったときに、面白いコンテンツもやっぱり、本の文献を全部調べて番組にしているじゃないですか。ということは、あれは本の解説番組ですよね。

田中:本の上澄みなんですよね。

福田:ですよね。だから、ベースにある知の部分はやはり本なので。やはり本をあまり読んでない人とは、会話が深まっていかないと思います。ちょっと偉そうですけど。

田中:いや僕も編集者に、「どのくらい本を読みましたか」って聞かれて読書リストを見たら、「6000冊くらい読んでますわ」って。そしたら偉そうに、著者プロフィールにそのまま書かれちゃったんですけど。でも6000冊って言っても、図書館で言うと棚1つくらいですから。

福田:そうかもしれませんね。

田中:本当、たいしたことないんです。僕が本を読んで憧れたのは、福田さんもおっしゃっていたガルシア・マルケス。それから、司馬遼太郎。それから、マルクス。この3人は、もうとにかく、そこにある本は全部読みました。司馬遼太郎は歴史小説を書く時、神保町の古本屋にトラックをチャーターして行って、乗せるだけ乗せて、奈良まで持って帰ったので、店に何もなくなったという逸話があって(笑)だから司馬遼太郎は面白いわけで。司馬さんだって読んだところから人に伝えようと思うのは数%じゃないですか。その下積みがあって、さらに上に積んだ数%。それが「この人って、すごい教養があるんじゃないの?」と思われる所以じゃないかなと思うんですよね。

福田:今は「多様性、多様性」って言いますけど、本を読めば、多様性は生まれるので、僕は大切なのは「本と旅」かなと思うんですよね。でも社会に出て、田中さんは電通にお入りになって、僕はソニーに行ったりすると、マスマーケティングを徹底的に教わるわけですよね。つまり、「標準化されたゴールを目指せ」っていうことを言われる。「この映画100万人にリーチするかな」とか、「このコピーを読んで100万人がこの商品を買うかな」とか。でもその100万人って、本当に実在するのかな?って、思うようになったんですよ。現代は韓国でローカルな恋愛ドラマをつくっても、ネットフリックスなどの配信やテクノロジーの進化によって、世界中にあっという間にリーチできてしまう。だから、1%の人しか見ないものでも、グローバルに、また小さなスモールコミュニティーに、それが飛び火する可能性がある。そういうことでは、ものすごく可能性に満ちた時代ですよね。だからみんなが目指すような「共通のゴール」はむしろ無いほうが自由な社会になるし、それがすなわち多様性なのかなと思いますね。

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