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出版は、エンタメとテックの接着剤になる

“泥船”の出版をどう変える? 元ベストセラー作家が目指す「印税率5割」革命とは(前編)   Talked.jp

福田:田中さんといえば、投資家と事業者のマッチングプラットフォームで知られる「ファンディーノ」のクラウドファンディングで、30分以内に4千万円の資金を集められたことで大変話題になりましたよね。これはどういうことだったのでしょう?

田中:これが不思議で。ファンディーノさんは、未上場株を買えるという、株式の民主化みたいなことを考えていらしたので、会社をつくったときから、いつかエントリーしようと思っていたんです。なぜかと言うと、「株式本来の意味に立ち返ってほしい」という思いがあったんです。つまり1個買った株を、上がったから売って儲けるとか、下がってきたから損切りするとか、それっておかしいんじゃないの、と思うんです。株式は、買ってその会社を応援して、持っていて、その会社が頑張ったらうれしいし、頑張らなかったら、「オレは株を持ってるんだから頑張れよ」って激励する。そういうものだと思っていたので、それを実現したかったんです。一応、1株5万円で、5万円持った人たち100人が「頑張れよ」と言ってくれたらうれしいなと思っていたんです。でもクラウドファンディング開始27分ぐらいで、4000万円も売れたと。えーっ!ていう。

福田:発想とコンセプトだけで集まっちゃった。

田中:はい。その時点ではまだ、なんにもやってなかったです、うちの会社。

福田:すごい(笑)衝撃ですね。

田中:その前に、賛同してくれる人も少しはいるんじゃないかなという手応えはありました。クラウドファンディング前に、個人投資家の方のところにあいさつに行きまして、「こんなことを考えているんですけど」と言ったら、1億4000万がまず集まったんです。KLab株式会社会長の真田哲弥さんとか、DeNAの共同創業者でエンジェル投資家の川田尚吾さんとか。そういう人たちが「面白い。1000万出すわ」「2000万出すわ」と賛同して下さったので、「紙の本にこだわって印税率を挙げるという単純な仕組みも、ひょっとしたらみんな、興味があるのかもしれない」と。それでも、おっかなびっくりだったんですよ。

福田:やはり、言葉に力があったんですね。

田中:同じ事しか言わないということがよかったんですかね。ワンイシューですよね。

福田:面白いですね。僕はアートギャラリーとタレント事務所という、同じエンタメでも全然違う畑の経営をしていて思うところがあります。映画業界はとくに今、資金集めが大変になっていて、それは僕も以前映画会社いたので、よく分かるんですよ。でも一方でテック系のスタートアップでは、コロナの巣ごもり需要で金余りで、現代アートにお金をかけるようなブームになっている。少し前は1枚100万円ぐらいの価値だった現代アーティストの作品が、SBIオークションで1000万とか、5000万とか、あるIT社長の後輩は、「アートフェア東京に行って、2億円分買ってきました」とか。とにかく、むちゃくちゃ潤沢にお金があるわけです。でも映画業界は、同じ港区にいても、お金が全然ない。両者は全く、交流も接点もないんですよ。テレビ局も映画会社も、漫画原作で流行ったものをテレビアニメやドラマ、劇場にかけていって……という閉じた世界でやってるから、新規参入もほとんどない。一方でテック系はどんどんどんどん伸びているから、「サウナでも作るかな」みたいな方向に行っちゃって、ついでに名刺代わりに本も出したりして。

田中:そういう方向で本を出す人、めっちゃいますね。

福田:だからやっぱり、エンタメ業界とテック系、この全く接点のない両者の接着剤になるのが、出版なのかなと思います。田中さんのビジネスモデルに賛同された方も、テック系の方が多いですよね。

田中:皆さん、そうですね。

福田:だからやはりどの時代も、一番イケてる業種の人が引っ張ることになるんですけど、日本の場合、テック系だけは内気だったというか、オタク気質の人が多かったせいか、20年遅れたと思うんですよ。それが今の日本の停滞につながっている。アメリカの場合だとシュッと、テック系へと上位の時価総額が入れ替わるわけですよね。僕はアフターコロナの日本の売りは、スタートアップになると思っています。だから田中さんがおやりになることは、全然他と違うし、ユニークだし、こんなに重要なお仕事はないんじゃないでしょうか。

田中:ありがとうございます。福田さんがおっしゃることはまさしくそうで……。例えばアメリカはラッキーなことにスティーブ・ジョブズという人がいて、テックの化身だった。権化だったはずなのに、やはり成功すると、「ピクサー作ろうか」となって、つまりエンタメとか、人を楽しませることと多額のお金がどこかで直結してくる。それはヒッピー世代っていうのもあるけれども、日本の場合はそこが分断されてしまって、お金はお金、エンタメはエンタメ。「貧乏だけどお金を集めて、こつこつ作ってください」となる。ブリッジがないですよね。

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