㈱スピーディのビジネスモデルをヒントに
福田:たしかに、5割だったら1年で1500万ですからね。
田中:そうなんですよ。だから、まずそれを1つ解決したい。印税率をもっと上げたいと思ったんです。
福田:売れたことよりも、ビジネス構造のほうに関心がおありになったわけですね。
田中:そうなんです。
福田:ウディ・アレンが主演の映画『ジゴロ・イン・ニューヨーク』(原題: Fading Gigolo)では、いろいろなビジネスの中間手数料の話が出てきて面白いんですよ。例えば広告代理店は10%とか15%とかでショボいよね、と。その点、ポン引きは9割持っていくからいいよねって(笑) それで考えると、ある芸能事務所と所属タレントとギャラの按分が「9・1」って言われて一時期話題になりましたが、それポン引きと一緒なんですよね(苦笑) でね、ちょっと言いにくいんですけども、これ出版社の料率も同じなんですよ。出版社って、芸能事務所とポン引きと同じ暴利を貪っているのに、知的なベールまとっているから、著者は逆らえない。
田中:誰も、それをあくどいとは思っていないですよね。僕もその問題意識が生まれました。でもそのときですね……。うちの会社では、「印税を最初は2割、もしベストセラーになったら最大5割まで払うビジネスモデルで始めようや」って決めた際に、実は一番参考にしたのが福田さんの会社、スピーディさんだったんです。
福田:なんと。そうだったのですか。
田中:ちょうど同じ時期に、福田さんが出版事業を始められるというホームページを拝見しまして。直販、それからAmazonプリントオンデマンド、Amazon電子でやると。で、紙をやらない。これは1つあるなと思ったんです。でも「これは福田さんがやらはるから、じゃあうちは紙にこだわった上で、印税率を上げるという方向で行こう」と決めました。
福田:見てくださってありがたいです。でも、みんながそうやって、変えていこうとしていかないとね。業界構造は変わらないですよね。
田中:ええ。だからみんなが同じ時期に、きっと福田さんも含めて、その問題意識が同時代的にあったということですよね。