医療未来学の第一人者と語る「死ねない時代」にフィットする国家像とは?(前編)

医療未来学の第一人者と語る「死ねない時代」にフィットする国家像とは?(前編)

編集・構成:井尾淳子
撮影:越間 有紀子
日程:2023年2月9日

奥 真也(写真/右)

1962年大阪府生まれ。 大阪府立北野高校から東京大学医学部医学科卒。 英レスター大学経営大学院修了。 医師、医学博士。経営学修士(MBA)。 専門は、医療未来学、放射線医学、核医学、医療情報学。 東京大学医学部22 世紀医療センター准教授、会津大教授を経てビジネスに転じ、製薬会社、医療機器メーカー、コンサルティング会社等を経験。現在、埼玉医科大学総合医療センター客員教授。創薬、医療機器、新規医療ビジネスに造詣が深い。 著書に「Die革命~医療完成時代の生き方」(大和書房2019)「未来の医療年表 10年後の病気と健康のこと」(講談社現代新書2020)「“生存格差”時代を生き抜く 世界最先端の健康戦略」(KADOKAWA2020)「未来の医療で働くあなたへ」(河出書房新社2021)、「医療貧国ニッポン」(PHP新書2022)「人は死ねない 超長寿時代に向けた20の視点」(晶文社 2022)など。

福田 淳(写真/左)

連続起業家
1965年、大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業。
ソニー・デジタルエンタテインメント創業者
横浜美術大学 客員教授、金沢工業大学大学院 客員教授。
タレントエージェント、ロサンゼルスを拠点としたアートギャラリー、沖縄でリゾートホテル運営、大規模ファーム展開、エストニア発のデジタルコンテンツ開発、スタートアップ投資など活動は多岐にわたる。
自社の所属アーティストとは、日本の芸能界にはなかった「米国型エージェント契約」を導入したことでも話題を呼んだ。
1998年、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント社 バイス・プレジデントとして、衛星放送「アニマックス」「AXN」 などの立ち上げに関わる。
カルティエ「チェンジメーカー・オブ・ザ・イヤー」受賞 (2016年)
ワーナー・ブラザース「BEST MARKETER OF THE YEAR」3年連続受賞 (2012-14年)
日経ウェブ「21世紀をよむITキーパーソン51人の1人」選出 (2001年)
文化庁 「コンテンツ調査会」委員
経済産業省 「情報大航海時代考える研究会」委員
総務省 「メディア・ソフト研究会」委員
著書

『ストリート系都市2022』(高陵社書店)
『スイスイ生きるコロナ時代』(髙陵社書店) 共著 坂井直樹氏
『パラダイムシフトできてる?』(スピーディ出版)
『SNSで儲かるなんて思ってないですよね?』(小学館)
『これでいいのだ14歳。』(講談社)
『町の声はウソ』(サテマガ)

(株)スピーディ 代表取締役社長
Speedy Gallery Inc. (CA, U.S.) - President
Speedy Euro OU - President

NPO「アシャンテママ」 代表理事
NPO「ファザリング・ジャパン」監事
公式サイト:
http://AtsushiFukuda.com
YouTube対談動画
https://m.youtube.com/@talkedjp

公的医療保険の限界

福田:今日は医療未来学の専門医、作家の奥真也先生をお招きしました。お時間をいただき、ありがとうございます。

奥:こちらこそ光栄です。よろしくお願いします。

福田:さて皆さんは、奥先生の最新著書『人は死ねない 超長寿時代に向けた20の視点』(晶文社)をもうお読みですか? 僕は2020年出版『未来の医療年表 10年後の病気と健康のこと』 (講談社現代新書) という本で奥先生と出会いましたが、どちらも知的興奮が詰まった本なので、ぜひお読みください!

奥:ありがとうございます。

医療未来学の第一人者と語る「死ねない時代」にフィットする国家像とは?(前編)   Talked.jp

福田:僕はもともと健康オタクで、「趣味、長生き」といってもいいほどなのです。長生きのために、自己幹細胞注射(皮膚の再生やアンチエイジングに効果のある成分を含む)とか、自己活性リンパ球療法(自身の血液から免疫力を高める役割のリンパ球を取り出し、活性化させながら増殖させ、免疫力を増強する)を3年以上やっているんです。 血液検査でキラー細胞の数が出るんですよ。20歳のときに(体内にいる免疫を守る)兵隊が100人とすると、50歳では50人に減っている。でも3年活性リンパ球を入れて、70人ぐらいの兵隊まで取り戻しました。あとはオリンパスの10mmのカメラを入れて行う胃カメラや、腸の中で反転できるカメラの大腸内視鏡をやり、精密度が最高レベルのMRIで脳も心臓も膵臓もやりました。要はカメラの目とAIの組み合わせで診断するみたいなことを、もうコロナの間中ずっとやっていたんです(笑)

奥:なるほど。

福田:ご著書にもありますが、未病の状態、健康な状態で病院に行くという医療の在り方の変化について、先生はどうご覧になっていますか? 

奥:医療保険制度の面から言うと、もう何でもかんでも、公的医療保険でカバーしてあげることはできないんですね。なのでこれからは、医療保険制度をどこに限定するか。そこが社会的、国家的な課題になっていくと思います。おそらく(公的保険は)致命的な病気とか、保険がないと金銭的に困る人に限定することになっていくと思うんですよ。今はまだニキビでも治療できるので、そういう意味ではカバー範囲が広すぎる状況で、将来的にそれはもう無理だろうと。いい医療技術はもちろんあるんですけども、その中でどれは医療保険で、どれは個人がお金を払うのか。そこを考えていくことになるのかなと。 福田さんが受けていらっしゃる幹細胞の技術もそうですが、基本的にはもっと技術は広がっていくし、病気の範囲も広がっていくし、使い方も多岐にわたって広がっていくと思うんですけれども、ここでまたお金の問題になります。保険でカバーできる幹細胞治療はかなり限定されていくでしょうし、がんだとか、特殊な神経疾患などは大丈夫だと思うんですけれども、それ以外のところ…さっきの兵隊を増やすだけとか、美容目的の治療は保険ではカバーできないので、そこはさらに個人にかかっていくでしょうね。たとえば、10万円の幹細胞治療があったとして、その価値をどう捉えるか。たとえば食べる贅沢とのバランスなど、「どこにお金を使うか」という選択肢の中に、そういう先端医療が入ってくることは間違いないだろうと思います。インプラントとか、視力回復のための高い眼内レンズなども選択肢に入るでしょうね。

福田:ICL(有水晶体眼内レンズ挿入術と呼ばれる視力回復手術)ですね。それもやりました。3焦点でしたが、次に5焦点レンズが開発されたら変える予定です。

奥:そうですか。焦点を合わせるのは、大変じゃなかったですか?

福田:大変でした。それで3焦点だと、遠く、中間、近くの3箇所なので、近くのスマホとPCの微妙な距離のピント合わせが不自由で、生まれて初めて眼鏡をしなきゃいけなくなっちゃいました。

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