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生きる動機はポジティブなものに

医療未来学の第一人者と語る「死ねない時代」にフィットする国家像とは?(前編)   Talked.jp

福田:星新一のSFショートショートにあった話で、もう何百年も生きた大富豪が、臓器をどんどん機械に入れ替えて変えて長生きし、執事に「ご主人さまの人間部分は、もはや歯だけですね」と言われるんです。そしたら、大富豪は、「入れ歯じゃよ」と返すというのがオチの話がありました。現実世界でも、これからはそんな感じになっちゃうのかなと。

奥:私も星新一は好きでよく読んでいましたけれども、その話は記憶がないですね。

福田:最近自分は、次から次へと物事を忘れていまして、「思い出す癖をつけたほうがいいよ」とまわりから言われるんです。でも、思い出そうとすること自体を止めたんです。なぜかというと、思い出すことよりも新しいことを考えることに自分のCPUを集中させたほうがいいと思っていて。「忘れることを恐れないほうが、長生きするんじゃないか」っていう、勝手な思い込みがあるんですけれども(笑)

奥:その思い込みは、正しいと思いますよ。なぜかというと、そもそも昔の話を思い出せることがなぜ良いのか。それって、全然説得力がないですよね。

福田:そうですよね。ないです。

奥:思い出そうとすることにはストレスがかかるんです。思い出せないことで、「自分はボケたんじゃないか」とネガティブになるし、そのストレスは少なくとも絶対に悪いので。ストレスについては、酸化ストレスなど、物質的にもかなり解明されているので、基本的にストレスは1秒でも短いほうがいいと言えます。嫌な仕事はやらないとか、嫌な人には会わないとか。 先程、「健康オタク」というお話もありましたけれども、結局そのときのストレス状態の積分で、それが多ければ多いほど駄目なんですよね。だからストレスがあるときは、できるだけストレスの全体量を減らすのが大事です。

福田:なるほど。うちの父が一昨年87歳で亡くなったのですが、最後3日間ぐらい入院しただけで、ほぼ元気な状態だったんです。亡くなる2年ぐらい前の診断は、「10のうち2ぐらいボケている」というもので、ほぼ普通の状態だったんですよ。お医者さんは、「80を過ぎて2割ボケは幸せですよ。幸せな人しかボケないから」って。

奥:幸せな人しかボケない。なるほど。

福田:でも反対に恨みが強い人…たとえば「姑に仕返ししたい」とか「死後、オレの金を狙うやつは許さない!」とか、怒りが長生きのモチベーションになる説もあるじゃないですか。執念や怒りとボケの関係はどうなんでしょう。

奥:でも結局、それはネガティブな動機ですよね。ネガティブなパワー、エネルギーですね。そっちは長生き目線で言うと、あまりよくないと思います。健康でなければ敵を倒せないというモチベーションとしてはいいと思うんですけれども、ただストレスはずっと関わってしまうので。そこはやはりネガティブな動機よりも、「美味しいものを食べ続けたい」とか、「孫の結婚式を見たい」とか、プラスな方向の動機のほうがモチベーションとしてはいいですね。

福田:マイナスの感情はやっぱりどこかで、意識的に「~したい」「~のほうがいい」という、自分にとってプラス側のスイッチに転換する。フィジカルにとっても、基本的にはストレスをためないように暮らすことが長生きの秘訣になるわけですね。

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