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プルーストの小説に震えた十代

いま、必要な「エリート論」~マクロン大統領とナポレオンの戦略  Talked.jp

芳野:中高一貫校だったので、意外と大きな図書室で、ラノベから難しいものまでありました。ラノベは『クラッシャージョウ』*シリーズ、難しいものはヘーゲルとかまで。図書館の奥のほうに、誰も読んでいなさそうな分厚い小説があって、「しばらく時間がつぶせるかな」と思って読んだ本が、プルーストの『失われた時を求めて』*でした。その1ページ目を読んで、「追いかけたい!!」と思ったんです。何だか、呼ばれているような気がして。

*高千穂遙作のSF小説のシリーズ。1970年代後半から1980年代前半にかけての日本のスペースオペラを代表する小説

*マルセル・プルーストによる長編小説。プルーストが半生をかけて執筆した大作で、1913年-1927年までかかって全7篇が刊行された。フランス語の原文にして3,000ページ以上、日本語訳では400字詰め原稿用紙10,000枚にも及ぶ。

福田:呼ばれていましたよね、それは。

芳野:15歳の力はすごいので。それでもう、その学校には英文と国文しかなくて仏文はなかったので、受験をしなければというので。それでフランスに行って、今に至るという感じです。

福田:エネルギーが余っている上に、むちゃくちゃヒマですよね、10代って。僕の場合、フランスに関することはヒッチコックの映画からトリュフォーに行きました。映画評論家の山田宏一さんの翻訳本『定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー』*(晶文社)を読んだら、「フランスっていいな」って思ったんですけど。それでアラン・ロブ・グリエ読んで、アール・ヌーヴォーを読んで、マルグリット・デュラスを読んで、みたいな。でもフランスの文化って、そんなに紹介されてないですよね。アメリカばっかりで。

*フランソワ・トリュフォーが聞き手となってアルフレッド・ヒッチコックにインタビューした対話の記録。

芳野:ちょっと存在感が薄まっているかもしれません。第二外国語としてフランス語を選ぶ人も少なくなっていると聞きます。

福田:フランスに行かれたのは何歳ぐらいですか。

芳野:22歳ぐらいで行って、10年間ぐらいいました。20代は全部、フランスで過ごしましたね。一応、パリで勉強する名目で行ったんですけど、そんなに勉強せず…。楽しく遊んでいました(笑)

福田:外国生活を楽しんでおられたんですね。

芳野:プルーストが好きで行ったので、特にフランスが好きだったわけじゃなかったんです。だからお見合い結婚みたいなものでした。プルーストは自分で選んだものですけど、たまたまその人がフランスの人だったので、行ったという。あんまり憧れとかもなかったので、徐々に好きになるっていう感じでした。プルーストがアメリカ人だったら、アメリカに行っていたと思います。

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