マクロン大統領にみる「エリート」の姿勢
福田:じつは芳野さんに、今日はどうしてもお聞きしたいテーマがあって。先日お目にかかったときに、マクロン大統領*のタウンミーティング(政治家との対話集会)から、エリート教育の話をされていましたよね。じつはそれが心に残っていて。読者の方に向けて、ぜひもう一度ご説明していただけますか。
*エマニュエル・ジャン=ミシェル・フレデリック・マクロン。フランスの政治家、第25代フランス大統領
芳野:はい。2018年秋ごろ、「イエローベスト運動(黄色いベスト運動)」というのが起こっていたんですね。燃料税(炭素税)の引き上げ反対がきっかけで、市民が街頭に出て、黄色いベスト(反射チョッキ)を着てデモを行う運動なんですけども。同時に、マクロンの人気はどん底まで落ちました。
福田:なぜ人気が落ちたんですか。
芳野:そもそもそのデモ運動前に、市民の期待にあまり応えてなかったっていう。期待と現実が一致してなかった。
福田:期待が大き過ぎた部分もあるんですかね。
芳野:そうだと思います。それで、ちょっと始まった運動が、思いがけず大きくなってしまった。私も毎日ネットでフランスのニュースを見ていて、「やっぱりマクロンはすごいな」と思ったのは、絶対に謝らないということ。
福田:興味深いですね。
芳野:自分は正しいと思ったことをやっているし、間違いなく正しいって演説しているわけです。全国各地を回って市民を集めて、何時間もディスカッションしてそれを映像で流して。
福田:YouTubeで6時間とか7時間とかやっていましたよね。ずっとしゃべりっぱなしで、「俺が正しいんだ」「理想はこれだ」と。
芳野:どんな質問が来ても必ず返すっていうのがすごいなと思いました。量的にも、1来たら100返すくらいの勢いで。果たして日本の政治家に、マクロンのようなことができるかなって。どんな質問が来ても絶対に返すし、どんな質問が来ても、「今やっていることが正しい」と言い切る姿勢…みたいなものですけれども。