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圧倒的な非合理が世界を変える

いま、必要な「エリート論」~マクロン大統領とナポレオンの戦略  Talked.jp

芳野:フランスにいるときにアルゼンチンタンゴにはまって。アルゼンチンタンゴって、男性が動きを全部決めて、女性は男性と一緒に動くんですけど、これが結構大変なことで、ちょっとでも先走ると一緒に動けないし、ちょっとでも遅れると一緒に動けない。

じゃあどうすればいいのかというと、「相手の体の軸に自分の体の軸を常に合わせる」。以上、なんです。相手の体の軸に自分の体の軸を合わせれば、動きがわかる。動きはなにでできているかというと、右から左、左から右の重心移動、つまり歩くことと、それから方向を変えるための腰の回転。重心移動と、回転。それで全ての動きが因数分解できるんです。なのに、ステップを一個一個覚えようとする人がいる。でもそれ、全部因数分解できるんです。女性は動けばいいだけだから。読んで、分解して、また組み立てればいいだけのことなので。一個一個覚える必要は全くない。だって、相手がどう出てくるか分からないんだから、予測しても思い通りにならない。だったら常に分解された状態でいたほうがいい。来たら組み合わせる。  アルゼンチンタンゴの有名なダンサーの言葉に、「歩き方を学ぶには一生かかるけど、ステップ一個覚えるのは5分でできる」というのがあります。歩くとは、右足から左足、左足から右足に、重心移動をすること。だからプロは最初の10年間ぐらい、重心移動のセンスだけを徹底的に養う。そこができれば、他のことは5分で覚えられる。私やっぱり、合理的にそっちのほうがいいように思います。歩けなかったら、いくらステップをいっぱい覚えても、状況に対応できないんですから。

福田:なるほどね。僕、2カ月に1回「AIサロン」という企業のエグゼクティブ向けの勉強会を主催しているんですね。初回のとき、キーノーツスピーカーとして脳科学者の茂木健一郎さんをお招きしたんですよ。今の芳野さんの話を伺って、そのときの茂木さんのお話を思い出しました。「AIについて話しますけど、多分細かい話をしてもあまり意味がないから、AIのトップクラスの人たちがどんな人たちなのかを話します」って。仮想通貨もそうだけども、アメリカの金持ちだったりロシアの研究者だったり、いろんなことを知り尽くした人が面白がってやっている最先端のAIの世界っていうのは、計り知れないエネルギーの人たちでものすごくアナーキーなんだ、と。「分かんないと思うけど、そういうむちゃくちゃなエネルギーの世界が、世界を引っ張っているってことだけ、きょうは覚えてくれたら、それでいいです」っていう話だったんですよ。

今、非合理でも圧倒的な力で面白がってやってみようっていう連中は日本にあまりいないから、分かりやすさのほうに行っちゃって、かえって本質的なことが分かんないっていう状況が頻発してる気がしますよね。非合理なものに対して理解力を強めるっていうのは、本来、アートの役割ですよね。この前ロスに行って、日曜日はビバリーヒルズ公園でみんなテントを張って、その辺の絵描きが絵を売っていたり、個展を開いていたりするんですけど、老夫婦が来て、「何を描こうとしてるんだ」って、熱いディスカッションをしたりしているわけですよ。ないですね、日本だと。最近はとくに、非合理なものは社会から排除されてしまっている。

芳野:やればやるほど力が出てくるっていうこと、あると思うんです。マクロンが6時間しゃべっていても大丈夫なのって、しゃべっているという行為からエネルギーを得ている。反対に、使われない能力はどんどん失われていきます。

福田:面白い。今日はむちゃくちゃ学びのある回でした。やっぱり、芳野さんにはエリートに関する本を書いていただきたいです。

芳野:すごくたたかれそう(笑)

福田:そう思う。すごくたたかれそう。だから必要ですよね。これ絶対、この切り口のテーマは世の中に必要。本当にいい時間になりました。面白かったです。

芳野:こちらこそ、ありがとうございました。

福田:ナポレオンの本は読みます!

                     

芳野:はい。ぜひ大人の読書会をやりましょうね(笑)

(了)

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