労働環境は激変している
私がトヨタを辞めたのは54歳と7ヶ月。私もそうであったように、シニア社員を取り巻く環境というのはいろいろ変わってきています。ただ若い方に比べると、「やっぱり僕らの世代はまだ恵まれている」と、私も思っていました。これから年金がどうなるかわからないと言いながらも、私も65歳からしか厚生年金がもらえない最初の歳ですが、年金はそこそこ出るだろうと思いますし、ここ5年、10年で日本の大企業がバタバタと全部倒産するっていうこともまあないだろうと。こういう我々の世代を見て若い方々は「逃げ切り世代」とか「茹でガエル」と称していますよね。…「茹でガエル」ってわかります? 冷たい水の中に入っていたら、どんどんお湯が沸騰して、周りの環境が変わっているのを知らずに茹でがえっちゃっているカエルのことです。「まったくその通りだな」と、僕も思います。
皆さんご存じの通り、もう定年は65歳になります。今でも65歳まで会社にいる人は多いです。2013年に高齢者雇用安定法が改正されて、日本の企業では60歳を過ぎた社員の定年をなくすか、はたまた定年を延長するか、となっています。一般的には65歳までの延長ですね。それができなければ、何らかの形で「5年間雇用せよ」と。この「何らかの形」が、今ほとんどの会社がやっている「再雇用」ですね。1回会社を退職して再雇用する。だいたい給料は半分くらいです。ほとんどの会社は再雇用制度をとっていますが、政府は「もうそれじゃダメ」「65歳まで定年を延長しろ」と言ってるんですね。さらに言うと、70歳まで何らかの形で仕事を担保せよと。じゃあ会社が雇いたいのかというと、実際は雇いたくないわけです。ぶっちゃけて言うと、55歳くらいになったら辞めて欲しい。だからどうなるかっていうと、「早期退職勧告」が起きてきますね。何かの形で仕事は与えますが…某損害保険会社が、「系列の介護施設に移動してください」という人事異動を出した。
これはずるいと思いますね。文句を言うと「おまえは介護の仕事をなめてるのか」っていうことになりますから。同様のことが日本の大企業にはあって、「退職金を積むから辞めてくれ」ということですね。つまり、「もう終身雇用はできないよ」ということなんです。こういう潮流が、定年が65歳になるのと併せて必ず来るということです。