日本のビジネスは「ふわっと」している
福田:でも、これだけ日中の架橋で、マーケターとして今注目されていらっしゃるから、企業から「ツアーするので上海を教えてください」みたいな話になるんじゃないですか?
陳暁:ああ…ありますけど、基本お断りしているんですよ。そういう、ただの視察同行は受けていないですね。
福田:それはどうしてですか?
陳暁:何か不毛だと思うというか。意味がない。
福田:ああ、遊びになっちゃうんですかね。
陳暁:例えば「50万でどこかに視察に連れて行ってください」と言われても、ただおいしいご飯を食べて帰ってきて、学んだものが社内に反映されず終わる。そういうことを一番よくわかっているので。
福田:でも、日本人の会社の視察はその繰り返しだったんですよ。
陳暁:そうですね……もう勉強だけしてもいい余裕なんて日本にはないはずなんですが。例えば、半年契約などでずっとコンサルをしているクライアントで、「該当商品の市場調査」とかは行ってます。目的のない渡航は経費の無駄ですね。まあ私も自ら利益を断ってるのでなかなかの変態だとは思いますが。
福田:ですよね。この感覚ですよ。ただお金をもらって視察に行こう、付き合いましょう…みたいなことはお断り!っていう。
陳暁:大学生のときに、アルバイトで通訳をやっていたんですけど、そうすると日系企業から受けた話を中国側にしてやりとりをするじゃないですか。私が中間に座って。18、19歳でそういう仕事をやっていたんですけど。「で、いくら仕入れるの?何個?いつまで?」っていうふうに中国側は言うんですけど、日本はそこまで詳細を詰める予定で来てないので、「とりあえず見に来ました」みたいな感じで来るので…。
福田:「ちょっと持ち帰って…」っていうやつですね。わかりますよ。
陳暁:そうです(笑) その通訳とかやりとりが、もう大変すぎて。日本人の当たり前と、中国人の当たり前をすり合わせる中間にいる私が両方に気を使って、苦笑いする繰り返しですよ。疲れますよ。経済は発展したけども、その当時から中国人の感覚は変わってなくて。今でも「何の目的で視察に来るのか」って言われますね。向こうにメリットがないとやる意味ないですよね。向こうはビジネスで毎日回しているんだから。なのでそこは、中国人が無駄だと思っている部分を私はある程度把握しているので、日本企業に事前に提言したり、「次に商談に行くならここまでの話を求められていると思いますよ」とか「ここまでの話をしましょう」みたいなことを伝えます。