読書習慣を身につけよう
ここで、もう少し皆さんにも身近なお話もしたいと思います。
昨年、有限会社BACH(バッハ)代表でブックディレクターの幅 允孝(はば よしたか)さんという方と対談 をさせていただきました。とてもユニークな活動をされておられるので、ぜひ僕の会社のサイトにある対談記事を読んでみてください。
「読書というのは、ネットとは真逆のメディアです」という幅さんのお話が、とても興味深いと思ったんですね。どういうことかというと、即効性のあるネットに対して、「読書の良さは遅効性である」と。つまり3時間とか5時間とか、一定の時間をかけて読まないと内容がわからないし、ネットでいうところの「シェア」がまったくできないということです。シェアできるとしたら、読み聞かせのできる絵本くらいでしょうか。普通の読書は孤独なものですが、その孤独がとても大事なんですね。皆さんも、例えば何か知りたいことがあったとき、ネットで検索しますよね。すると、ある程度のことは分かります。でも「もっと知りたい」となると、深いことっていうのはやっぱり、本の中にしかヒントがないんです。だから今日は、みなさんより長く生きている者として、ちょっとだけ偉そうに「本を読まないとダメ」っていうことはお伝えしたいです。
「今、何の本を読んでる?」ってIT関係の社長の後輩に聞くと、「読んでますよ、スティーブ・ジョブスの自伝」って返ってきたことがあったんです。それ、10年前の本だけど…って。10年間、本を読んでいないのかなぁと思いましたけど、そういう人って普通に多いです。だからやっぱり読書はしたほうがいいですね。共鳴するものもあるし、しないものもあって、それが自分と社会の距離を測るのにすごく向いているんです。ですからしつこいですけど、皆さんの年齡の頃はとくに、読書習慣を身につけていただきたいなと思いますね。
(コロナを経験して)
コロナ禍で、一人当たりの読書量が4倍になったという調査結果を読みました。「4倍」がどこまで正しいかどうか別として、感覚的にも読書時間が増えた、と実感する方が多かったのではないでしょうか? 自粛生活で、テレビ、特にワイドショーのつまらなさには愕然とした人も多かったはずです。さらにSNSでは、集団リンチともいえる誹謗中傷が溢れました。追い詰められたときの人間ほど、本性剥き出しになるものだなぁと実感させられましたよね。不幸なことに、あるタレントの自殺もあり、ソーシャルメディア企業、及びそれを利用する人たちのリテラシーが問われています。読書は、人を知的にするだけではなく、客観的な視点をもたらしてくれます。見流すだけのメディアから少し距離をとりましょう。ポストコロナは、自分でものを考える時間をつくるために、この機会に身に付けた”読書癖”をぜひ継続してください。