Netflixに見る「多様性」
この先の未来には、僕たちの想像を超えるようなすごいことが起きるかもしれない。テクノロジーが進み過ぎて、未来図を壊してしまうとか、ずっと監視されてしまうとか。 例えば、あるジャーナリストが中東で取材していて、猛攻撃を受けてしまう。彼はただインタビューをしていただけなのに、その映像を解析したFBIが「こいつは敵だ」と認識して攻撃したというんですね。その人は大けがをしましたが幸いなことに一命をとりとめました。こういうディストピア(ユートピアの正反対の社会。政治的・社会的な課題を背景にもつ)が起きる可能性があるということも、テクノロジーの変化の反動であると覚えておいてください。
ですから、やっぱり僕らはできるだけ、テクノロジーに先読みをされないように、プランド・ハップンにのっとって、偶然に生きながら、好きなことをやり続けるしかない。
そのとき、自分とまったく違うもの、相容れないものを認める力をつけていくことが大切ですよね。様々な人種、ジェンダーの登場人物が出てくるNetflixのドラマのように、いろんな人がいていい。自分と違うから、人と違うからといって、いちいち目くじら立てて怒ることでもない。
Netflixの何がウケたのかというと、僕は多様性だと思います。たとえば、トランスジェンダーの女社長がドラマの主軸だったり、アジア人のいじめっ子がいたり。僕は前職でハリウッドの会社にいたので分かるんですけど、こういう配役、キャスティングはハリウッドでは絶対にないんです。アクション映画でもなんでも、主役は白人。ブルース・ウイルスなんて、50歳になっても普通に主役をやって恋もしますけど、30歳以上になったセクシー女優は、もう仕事がなくなってしまう。
でもNetflix的な多様性の価値観を、皆さんのような若者たちは、肌で感じ取っているはずです。だからもう、フジテレビも見なければハリウッド映画も見ない、そんな世の中になったほうがいいようにも思っているんですね。いろんな人がいて、いろんな価値観が世界にはたくさんある。アートを学ぶ皆さんは、そういうことを知って、認めていくことが大事だなと思います。
(コロナを経験して)
コロナ禍で病院に行かずにPCR検査できたり、実行再生産数(Production Effect)*などの指標を知っていたりする人は、たいてい海外のニュースに精通した人でした。盲目的に、かつ同じ国の同じメディアにしか接していない人は、SNSで国や為政者に文句ばかりの投稿を繰り返していました。メディアの多様性もさることながら、ポストコロナは自分の情報リソースの多様性も意識することが大切です。さもないと、とんでもないデマを信じて被害を受けることになりかねません。ポストコロナは、新しい情報収集を試してみる機会をもってみることをおすすめします。
*疫学において、感染症に感染した1人の感染者が、誰も免疫を持たない集団に加わったとき、平均して何人に直接感染させるかという人数。