優先すべきは、目の前のことだけ
中田:中東にいると、まず計画ってあまり立てないんですよ。立てても、目の前にあるものが最優先なんです。約束があっても、そこに人が来たときには、来た人間のほうを優先するんです。
福田:約束があっても、まずはフィジカルのほうが大事だということですね。
中田:そうなんです。約束なんて、別に条件次第なわけです。さっきも言いましたけど、中東なんかですと、大体は何事もうまくいきませんから。電車に乗ると電車が止まったり、車に乗ると車が壊れたり(笑)。大抵、もうなんか思ってもいなかった問題が起きてうまくいかないんですね。
福田:すごいな(笑)。それに対して、みんなはもうフラストレーションもないんですか?
中田:思わないですね。アフガニスタンに行ってみると、そもそも一日の予定を立てないし約束すらしないっていう。
福田:え!?
中田:本当に、なんの約束もないんですよ、毎日。約束もしない、予定も立てない。その日のその場で思ったことを、ただやっていくっていう人たちで(笑)
福田:誰かと会おう、なんて発想はそもそもしないんですか?
中田:いや、だから思い立ったときに行くわけですね。
福田:ああ。
中田:だから、当然相手もいなかったりするわけで(笑)。当たり前ですよね。当たり前なんですけど。そういう感じで、本当に約束しません。……でもアラブは、約束するだけましだったなって(笑)
福田:約束しても、目の前に来た人を優先しちゃうんですよね?
中田:そうなんです。ともかく、目の前にあるものを優先するんですね。たまたま私の学生だった人間が、今トルコで就職したのですが、一緒に仕事をしていても、1年後どころか、3カ月後のことでもあまり真面目に相手にしませんよね。「あ、そう」とか言って。
福田:もう、遠い話ですよね。
中田:遠い話です。3カ月後なんて、本当に遠い話。コロナになる前からこうですからね、もともとですね。
福田:僕なんかでも、別に嫌な相手でもないのに、「来週アポありますよ」っていわれると、ちょっと気が重くなることがあるんです。その日の気分でやりたいわけですよね。でも、中東ではそれに合わせなくていいんだ。
中田:そうなんです。でも、日本でも、今の若い人はけっこうそれに近くなってきてる気はしますよね。それはやっぱりスマホのせいだと思うんですけどね。スマホで、ドタキャンがありになった世界ですよね、今って。
福田:そうですね。昔だったら「○時○分○曜日にここね」って、手帳に書きましたよね。駅の伝言板に、飲み会の二次会の場所書いたりして。
中田:そうなんですよね。昔の日本人は、それを守っていたわけですよね。
福田:そうすると、アフガンの人が飛行機で海外へ行こうと思うと大変ですね(笑)。ブッキングしないといけないから。
中田:そうなんですよね。でも、飛行機も飛ばなかったりしますから。
福田:飛ばなかったり(笑)。まあ、行っちゃうんだろうね、空港に。「行こうか~」みたいな。でも、笑うけど正しい気がしてきますね。ガチガチに約束を守っているのが「何で?」っていう視点の、もう逆の視点が新鮮ですよね。