ちゃんとしすぎ問題
福田:世界を見渡すと、ちゃんとしているのって、日本が一番じゃないでしょうか? むしろ、しすぎというか。
中田:そうなんですよね。しかも、非常に無駄に「ちゃんとしている」んです。80%のものを90%にする、90%のものを100%にするって、だんだんかかる労力が増えていくんです。なので、70%くらいの完成度のものを作るのが一番楽だし、一番効率がいいんですよね。それで、たいていのものは70%で役に立つんです。もちろん精密機械とかでは駄目なものもあるんです。時計なんかだと30%狂ったら大変ですけど、ほとんどのものはそれでもいい。でも、日本人は全て100%正しいものを作ろうとする。形が揃っていないと、果物でも売れないとか、バカなことばかりやってますよ、本当に。
福田:今、沖縄で農業をやっているんですけれど、農業って人件費がかかるんですよね。なので、これはITにしなければと、日本のベンチャーのいろんなロボットを見に行ったんですけど、日本人が作るロボットって正確さを優先してむちゃくちゃ鈍いんですよ。ところがイスラエルとか中国のロボットって無茶苦茶動きが早いんです。深センも。バーン! バーン! って動くんですけど荒いんですね。本当に木の実が7割しか収穫できないんです。でも7割取れればいいじゃんって。それで3割しか残ってないものを、もう1回そのロボットを走らせるんです。
中田:そうですね。100%完全なものを作らないといけないというのは、普通の人間には無理だし、不自然なんですね。そういうもののために、そういうことにこだわるアスペルガーの人とか、どうしてもそうじゃないといけないという人間っているわけですよ。そういう人間に任せたらいいんですよね。はっきりいって。
福田:役割発揮があると。
中田:そうなんです。だから研究者もそれに近いんですよね。
福田:やっぱり、20世紀にサラリーマンが多い社会を作っちゃったからこうなったんですね。みんなが自由業だったら、そんなに完璧主義ばかりじゃなかったかもしれない。
中田:基本的には官僚なんですよね。官僚って、もともと「マシン」というふうに言うんですけど、実際にマシンなんですね。機械のように動くという、そういうふうにできている。その官僚を育てるのが国立大学。官僚が一番偉くて、それをみんなが真似するという仕組みに。「その精度が下がるほど駄目だ」っていうふうになってますから、そこがいけないんですね、本当は。