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イノベーションの芽が生まれた背景②

お寺が改革する”デジタル・ウェルビーイング”の世界  Talked.jp

福田:東凌さんの幼少期のお話もお聞きしたいんですけど、そういうリベラルな姿勢は、いつ頃芽生えたのですか。もちろん、僧侶としての修行も積まれていると思いますが。

伊藤:自分の歴史はまだ、ちゃんと1本のストーリーになってはいないのですけれど……。大学を出たときも、「就職なんてしてはいけないよ」とか「お坊さんになりなさい」など、べつに誰からも強制されていないんですよ。企業からも請われるほどの何か才能があったらチャレンジしていくこともあったでしょうけれど、そういう力もなかったし。でも、お寺の文化で育っていく修行僧の姿はいいなとは思ったので、まず修行道場には行こうと決めました。正直そうすれば、ゆくゆく住職を目指すときも、資格に近いような、認められるラインに入れるかもしれないし、ならばやろうと思ったぐらいなんです。大学卒業して25歳まで3年間、何とか歯を食いしばって、正直耐えたという思いのほうが多かったですけれども。

福田:大変だったわけですね、じゃあ。

伊藤:はい。自分が苦手なこともしんどいことも、努力すれば人は変われるんだということはつかんだ上で……。お寺を離れて4カ月海外留学をすることを親もよく許してくれたなと思いますし。そこを許してもらえたことが、何かの種になっているなと感じますね。海外の人との交流を通じて、いろいろな視点の違いとか、「外から見た日本ってこうだよ」とか、「お寺はもっとこうすればいいのに」とか、遠慮なくばんばん言われましたが、凹むというよりはむしろ面白いアイデアが多いなと感じたので。そこはどんどん挑戦しようというふうになれた部分かもしれません。

福田:普通だったら、「そう言うけどさ、変えるのはそう簡単じゃないし」とか「歴史と学びは違うんだよ」なんてことも返せるわけじゃないですか、どんな年齢だったとしても。でも東凌さんはそれを言わなかったわけですよね。そこですでに、チャレンジの姿勢に入っておられたのだと思います。

伊藤:じつは25歳から29歳ぐらいまでは、塾の仕事にもアルバイト的に関わっていたことがあるんです。大手の学習塾グループだったのですが、そこで塾の運営に触れて、いつかお寺でも塾のようなことができるといいなと、教育にも興味を持ちました。塾の仕組みって、当然ですがビジネスなので、教室に空きがないように稼働率を回していきますよね。それを考えるとお寺って、ものすごく稼働率が低いやり方を……。

福田:むしろ、稼働しなくてもいいぐらいの感じ。

伊藤:はい。土日1回、法要があるだけみたいな。もちろん非公開の古書物の研究などもあって、それも大事ですけど。お寺も塾も、人が変わっていく事業というのが本質ならば、あちらはめちゃくちゃ稼働させるモデル。すべて同じやり方にはできなくても、お寺ももう少し、何か取り入れられることがあるんじゃないか、そのためにはいろんな手を試していく時期があってもいいんじゃないか……など思ったので。人の意見もやってみたり、思い付くことは取りあえず、小さくスタートをしていきたいですね。

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