東京ドーム興行秘話②
福田:その提携によって得られた長期的なブランディングによって、東京ドームではローリング・ストーンズ以降も、ずっと大物アーティストの招致が続くわけですよね。
北谷:そうです。ローリング・ストーンズの後はすぐにデヴィッド・ボウイをやりました。その後は福田さんもご承知の通り、U2、マドンナと続きました。 興行師というのは、「この場所を取っていますから来てください」という話をアーティスト側とするわけですけど、本当にその会場が取れているかどうか、分からないじゃないですか。もちろん東京ドームの場合は自分たちの会場ですから、ちゃんと取れているし、お金も支払うことができる。でもやはり上場会社なので、めったやたらとお金をばらまくわけにはいかない。そこで私が提案したのが、その後東京ドームの常套になった「エスクロー口座」というものを使うことです。要するに、ちゃんとしたアメリカの銀行に間に入ってもらい、巨額のお金をそこに預託して、ショーが終わるたびにきちんと現金が向こうに支払われる、という金融制度ですね。これまでの日本の呼び屋さんは、先に巨額の現金をリスクマネーとして支払っちゃうんですね。でも自分たちにはお金はないから、みんなテレビ局の資金でまかなっていました。そこをビジネスモデルごと変えたというのも大きかったですね。
福田:しかし、エンターテインメントでエスクローをかませてやる、なんていうしくみは、それまでの日本のショービジネスにはなかったですよね。
北谷:ええ。ありませんでした。
福田:だから逆に、反社みたいな勢力も入り込めた訳なんでしょうね。そこにちゃんと第三者機関を使って、すごいイノベーションを起こしちゃった訳ですね。