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Netflixが与えた影響は何か

伝説のプロモーターが読み解く「エンタメの未来2031」(前編)   Talked.jp

福田:ITのスタートアップの場合、最近はバイアウト(上場させないで、プライベートカンパニーとして第三者に経営権を売却すること)を目指す経営者が多いんです。日本の感覚で言うと、スタートアップで上場するときに、元の株価に対して10倍から30倍ぐらいの値段が付きますが、バイアウトは3倍から5倍なんですよ。でもいいアイデアの企業で、「自分のリソースでは、これ以上業績を伸ばせない」という判断をしても、新しい株主がそのアイデアを発展させて上手くいけばいい。 でも日本の映画産業は、有名なプロデューサーがいて、誰も口出しできなくて、その人に付いている座付きの脚本家がいて、クリエイティブなことに関しては「プロデューサーにおまかせしているから何も言わない」となる。どうして、映画を一つのスタートアップ企業のような形で成長させられないのでしょう? 日米のエンタメビジネスの差は埋まらないのでしょうか?

北谷:やはりビジネスとして、エンターテインメントが確立されていない、ということに尽きますね。日本は今まではお金だけは潤沢にありました。それは放送産業が豊かだったからです。免許事業で、完璧にプロテクトされていて、これだけの日本の市場があり人口もあり、広告宣伝費も潤沢に出た。だから、その中で全ては回っていたわけです。しかしこれから人口は減っていくし、それに比例して広告宣伝費も縮小してきます。そんな中で放送産業は、今までは電波を牛耳っていれば独占性がありましたけれども、ブロードバンドがどんどん広がってきた今、視聴者はNetflixやamazonプライム、U-NEXTを観ます。そうすると、放送局のバリューが少なくなる。結局、今まで放送局頼みだった資本もシュリンクして、作品製作費の削減、減少につながる。日本のエンタメ産業はもはや、このネガティブスパイラルに入っていると感じています。

福田:昨年から異様なほど、現代アートのブームが到来しました。東京アートフェアは、コロナの影響で優良なコレクターである中国人や香港の人たちが全く来ることが出来なかったにも関わらず、完売したんです。作品を買った人は40代のIT経営者が中心。今や現代アートは、住宅よりも利回りがいい金融商品の側面もあるんです。中にはアートフェアの初日で2億円分ぐらいのアート作品を買う経営者もいたのです。でも一方では、「映画を作りたい」と僕くらいの年齢の方がいらして、「3000万どうにかなりませんか?」と。これ、どちらも同じ日本の港区で起きています。だからこのお金の流れを作っていくために、やはり映画やドラマなどエンタメもひとつの金融商品として、投資に耐えうるフレームで製作できないかと考えています。北谷先生はNetflixの出現によって、日本のエンタメ業界にどういう影響があったとお考えでしょうか。

北谷:やはりこれからは、製作費を潤沢に出せるNetflixやamazonプライムのほうにクリエイターはどんどんなびいていくと思います。それは実際に世界中で起こっている。ただNetflixやamazonプライムも非常に賢いですから、日本国内でしか受けないような作品を、わざわざ自社の大金を投じて作ることにはそれほど興味を持たない。今は日本進出でパイオニアリングの時期ですから、イメージを高めるために、あまり作品の中身に細かい注文を出さずに、意図的にお金を使っていると思います。

福田:グローバル展開は難しいけど、日本なら受けそうだな、というものに期間限定で製作費を出してくれている、と。

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