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ビジネスマンは「ストリート系」であれ

福田 淳の最新本『ストリート系都市2022』発売記念! PIVOT代表 佐々木紀彦が特別インタビュー(前編)   Talked.jp

佐々木:一方で、「コロナ前の世界にそのまま戻るわけでもない」とも書かれておられるじゃないですか。そういう意味では、コロナ後に変わるものとは何でしょうか? 本質は変わらないと思いますが、それでも変わっていくものとは?

福田:当たり前と思っていたことが、当たり前じゃなくなったわけですよね。 人とハグできないとか、表に出ちゃいけないとか。そうすると基本的な人間の特徴を見直す動きに絶対なっていくわけですよね。だから住むところとか、食べるものだとか、人間関係みたいなものが大きく変質していくだろうなと思います。むかしガラケー時代に高校生に圧倒的人気を誇ったサイト「魔法のiらんど」っていう日記のようなコミュニティサイトがあり、「Deep Love」とかケータイ小説が大ヒットを生み出しました。 ところが、サービスのクオリティは維持しているのに、ある日突然人気がなくなったんです。理由は、ユーザーが高校を卒業して大学生になったからなんです。過去の自分を捨てるんですよね。コロナを通じて習慣化したもの、例えばNetflixもそうです。リモートワークの合間に見ていたNetflixが一度リアルな職場に復活すると、時間も無くなるし、もうコロナの悪夢と共に興味も薄れていくのだと思います。

話を戻しますと、アフターコロナ、ウクライナへのロシア侵攻後、キャピタリズムの多様化が進んでいます。分散化、多様化していく社会の中で、本当に一極集中の土地に猛烈に高い建物建てて、資産価値をあげるという20世紀的なビジネスモデルだけでいいの?これ以上タワマンを作る意味ってあるの?ということを投げかけてみたかった。コロナ前は中国人がいっぱい北海道ニセコの土地を買ってくれたとかあったかもしれませんけど、中国人自体も、中国政府によってキャピタリズムの終焉を余儀なくされてしまった。アリババでもテンセントでも、売り上げ規模が急速にシュリンクしています。

中国人の富裕層の友だちから今一番多い相談というと、「日本のビザはどうやって取れるの?」です。グローバリズムで、中国ともロシアともアメリカとも仲良くやっていたのが、ウクライナの紛争によってそれがなくなって、地域がブロック化されたわけですよね。ルーブルの価値なんて、今むっちゃ上がっている。じゃあ僕らが信じていたグローバリズムって何だったんだ?っていうその答えは、「ドバイに行ってみるべきだ」と。ドバイで今何が起きているかというと、アートと不動産の空前のブームが起きているんですよ。それはロシアのプチ金持ちが大勢やって来て、アートを買って、土地を買っているからです。ドバイもサウジアラビアも中東含めて、1カ国もロシアに対する制裁に加わってない。インドも含めて。「APEC」プラス「ロシア」プラス「インド」で、巨大な経済圏があるわけですよね。中国もロシアも、行き過ぎた金持ちは規制されちゃうんですけど、小金持ちの状態においては「どんどんやれ」ってなる。この小金持ち連中の避暑地はどこだって言ったらドバイなので、ロシア人だらけなんです。「ルーブルも厳しいだろう」って言うけど、円のほうが厳しい状態になってるじゃないですか。だから「何やってんの?」って話ですよね。9千キロも離れたNATOの一員に、日本は本当になる必要があるのか? 僕はないと思う。

佐々木:面白い。そういう意味でも、やはり「ストリート」という言葉がすごいキーワードですね。「ストリートスマート」という言葉もあったりしますし。タワマン的な空間にいると、真面目になりすぎるんでしょうね。余白がないというか。

福田:そうだと思うんですよ。コロナ前、中国によく行っていたときに、「日本の経営者の誰に会いたいか」と聞くと、中国のIT社長はみんな目を輝かせて「DMM会長の亀山(敬司)さんに会いたい!」って言うんですよ。

佐々木:ああ、ちょっとストリート系っぽいですもんね。

福田:露店商から会社を大きくしたという経歴をお持ちなので、みんな「話が聞きたい」ってなるんですね。そういうリアリティがある人の話が聞いてみたい、というか。

佐々木:たしかに。

福田:だから、政治家でもビジネスマンでも、「行って・見て・聞いて」をやっていないと、ストリート系(ストリートスマート)になれないですよね。この収録前に佐々木さんと、経営者のナンパ力みたいな笑い話、雑談をちょっとさせてもらったんですけども(笑)街で女の子をナンパできるような経営者だったら、芸能事務所に「ちょっと女の子よろしく頼むよ」なんていう構図にはならないですよね。

佐々木:すごい例えですね、確かにそうです(笑)

福田:やっぱりそれくらい、ストリートを歩くことは大事で、歩くときにもできるだけ、いろんな寄り道ができる能力がいるということだと思います。神田なんて歩いていると面白いから、いろいろ寄り道したくなるんですよ。でも、西新宿で横道に入っても、なんにもないですから。ドバイも人工的に作られているから、歩いていて面白くないんですよ。ところがアブダビだとかの古い町には横道があるじゃないですか。そういうところに文化が生まれる。日本でいうと、中央線沿い。サブカルの聖地ですけど、それだけ文化があるということですよね。ボブ・ディランはサブカルだったわけですが、ノーベル賞をとっちゃったから、メインカルチャーになった。メインカルチャーになるためにサブカルをやっていたわけではないんでしょうけど。そういう雑多なストリートにあるものが、成熟した文化を生み出すということの1つの証明になっていると思うんです。

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