広告は「自己紹介」ではない
杉山:さっきの福田君の話で、「1コマ探せ」っていうのがあったけど。やっぱり2コマ3コマ(の単位)で、映像っていうのは本当にニュアンスが変わるんだよね。それが今は疑似フィルムで「1フレーム」っていうようになったけど、それは「1コマ」ではなくて「1フレーム」だから、正確な「切れ」がない。だから見ていても、ニュアンスはあまり変わらないんだよね。
福田:それは決定的に違いますよね。その感覚が分かる人が少なくなっています。僕の経験では、21世紀になって、iモードが台頭してきてスマホゲームのCMが増えました。そういう新しいクライアントは制作費より媒体費にお金をかけたい。だから、ちゃんとしたプロダクションに発注しなくなって、「CMなんてもう500万くらいでできるんじゃない?」となっていきました。「CMクリエイティブに高額の制作費をかけるのはコストの無駄」となって、急にクオリティが下がっていきました。ただただ「新商品を知ってください・買ってください」のCMばかりになった。ネット広告になると、もっと酷くなっていって、データによる最適化でクリエーティブが決まるウォール街取引になってしまいました。
杉山:そこですね。もう基本的にみんな勘違いしているんだけど、広告というのは自己紹介じゃないんですよ。それなのに、今はみんな、「広告=強引な自己紹介」だと思っている。強引な「お知らせ」または「自己紹介」になってしまっている。
福田:あぁ……。そうですね。「出ました」「知ってね」「できれば買ってね」「なんならクリックしてね」という文脈でしか広告をとらえていない。