デザイン経営時代のブランディング
グローバル時代のデジタル・ブランディング思考法 ~WASEDA NEOトークセッション~(前編)
主催:WASEDA NEO
構成:井尾 淳子
撮影:越間 有紀子
日程:2019年月7月18日
場所:早稲田大学日本橋キャンパス(コレド日本橋5階部分)
WASEDA NEOとは
デジタル時代にこそ必要なブランドの考え方とは何か?
ソニー・デジタルエンタテインメントの創業者で、デジタル時代のマーケティング、ブランディングのプロである福田淳をホストに、第一線で活躍するデザイン、ブランディング等のプロフェッショナルを招き、最先端の「デジタルブランディング」として、デジタル時代を生き抜く「ものの見方・考え方」の本質に迫る講演会。 ゲストは、陳暁夏代 氏(DIGDOG代表)。日本と中国で育った華僑で、中国名門大学在学中からビジネスに携わる気鋭の若手マーケターである同氏に、中国の若者から見る、日本の来るべき未来についてお話します。
ゲスト/陳暁夏代(ちんしょう なつよ)氏
合同会社DIGDOG 代表、株式会社チョコレイト 執行役員。
2011年より北京・上海・シンガポールにてエンターテインメントイベントを企画運営。2013年東京の広告会社に勤務。2017年、DIGDOG llc.を立ち上げ、日本と中国双方における企業の課題解決を行い、エンターテインメント分野や若年層マーケティングを多く手がける。コンテンツスタジオCHOCOLATE Inc.執行役員を経て、現在は企業のブランディングを多く手掛ける。
https://www.chinshonatsuyo.com
Twitter : @chinshonatsuyo
ホスト/福田 淳(ふくだ あつし)
ブランド コンサルタント。1965年、大阪生まれ。日本大学芸術学部卒業。 ソニー・デジタルエンタテインメント創業者。 横浜美術大学 客員教授、金沢工業大学院 客員教授。 ブランディング業務以外にも、女優”のん”などタレントエージェント、北京を拠点としたキャスティング業務をはじめ、国際イベントの誘致、企業向け"AIサロン'を主宰、ロサンゼルスでアートギャラリー運営、森林破壊を防ぐNPOなど、活動は多岐にわたっている。1998年、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント社 バイスプレジデントとして、衛星放送「アニマックス」「AXN」 などの立ち上げに関わる。 NPO法人「タイガーマスク基金」の発起人をはじめ、 文化庁、経済産 業省、総務省などの委員を歴任。 2017年、カルティエ提供「チェンジメーカー・ オブ・ザ・イヤー2016」を受賞(日経BP)。近著に『SNSで儲けようと思ってないですよね~世の中を動かすSNSのバズり方』(小学館)がある。
http://spdy.jp
司会者:本日はお忙しいところ、お集まりいただきありがとうございます。今回のゲストは、陳暁夏代さんです。夏代さんは、日中両国の架橋になるような活動をされていて、中国事情について最先端の知見をお持ちの方になります。ではさっそく始めさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
「世界を見ている中国」と 「自国しか見ていない日本」
福田:まずは自己紹介からお願いいたします。
陳暁:はじめまして。陳暁夏代と申します。あまり露出をしてないので私のことをご存じない方が多いと思うんですけども、中国ビジネスに関する講演会や勉強会を行ったりインバウンド、アウトバウンドに携わっている企業からお題を受けブランディングや企画提案などをサポートしています。
独立をしたのは3年前くらいです。最初は2015年頃ですか、「春節の爆買い」の流行をきっかけに、日本のいろんなクライアントが中国市場に目を向けなければと気づき出しました。当初は日系企業の中国進出案件のほうが多かったんですけども、去年ぐらいからそれが逆転したんです。最近手掛けている仕事で言うと、中国企業の案件が8割くらい。2018年末くらいから、中国企業のベンチャーや中小企業が日本に進出されて、「日本の市場はどうやっていけばいいんだろう?」と。それと同時に2015年からの一時的なトレンドでビジネスに新規参入した日本企業は一回トライして撤退したと。日本の会社もだいたい3年経てば部門がローテするので…今は安定した中国ビジネスを手がける日本企業だけが残っている感覚です。独立以前はイベント会社や広告代理店にいたんですけども、その時にやっていたことを今、個人でやっているという感じですね。
福田:でも僕から見たら、今、逆の導線で日本は中国に進出しようとしているわけですよね。
陳暁:そうですね。
福田:中国を見ると、「あんなに若くて活性化していて、勢いがあるマーケットがあって、一方の日本企業は何をモタモタしてるの?」って思っているんですけど、中国の方がよくブログで日本のことを書くじゃないですか。「爆買いで憧れの銀座に行ったら、おじいさんとおばあさんばっかりだった」っていう(笑)
そういうのを見ると思うんですけど、中国企業から見た日本って、まだ魅力はあるんですか?
陳暁:まだあるみたいですよ。日本のクライアントと話すと「中国は中国市場だけで成り立つ」と言うんですけど、確かにそれはそうなんですが、結構外を向いている経営者が多く、同じブランドでも日本市場進出やアメリカ進出を見込んで展開したりと幅広いですね。中国の最大の強みは世界の工場の名残で“生産”だと思うんですが、それが最近はブランドづくりに変わっていって、最近だとプロダクトデザインもヨーロッパの有名なデザイン事務所にお願いしたり、ブランディングも日本のストーリーテリング式を取り入れたりと成長しているようです。適材適所いいものを統合して、多方面に売るという。
福田:日本は20世紀ビジネスの構造ですね。オープンイノベーションじゃなくて、一気通貫で垂直統合して、何でも自社でやろうっていう、そういう名残があるのかもしれませんね。
陳暁:そうですね。中国の人と話すとそれがなくて、「デザイナーはフランスのこの人が有名だからこの人」「生産はここが安いからこの国」「売るときは市場があるから中国で」っていうように全部分けています。そこがフラットに見ているなっていうのは思いますね。
福田:そのパターンはけっこうサンフランシスコに似ていますね。僕、30代のときにハリウッドの映画会社にいて、今に至るわけなんですけど、アメリカ人と中国人ってめちゃくちゃ似てると思うんですよ。
陳暁:そうなんですか。
福田:まず自己主張がきっちりしている。日本人は同調圧力で、みんな同じようにやろうみたいな…。まあそれはそれで、教育レベルが保てるとか、いい面はあると思うんですけど。僕、前職のデジタルの会社経営をしていたとき、いつも各国のアプリゲームのTOP10の定期的な報告があったんですけど、中国とアメリカで流行っているゲームってほとんど一緒で、人を殺すアクションゲームばっかりなんです。で、日本人は、畑とかを育てて、その果実をとるみたいなゲームが多いんですよね。
陳暁:中国は「世界ランキング=売上」を上げようという気合がすごいですよね。