「素材感」がイヤ
福田:それが、デジタル系の処女作ということなのかな。そして、そういうのをちゃんと講評してくれる先生がいたのはよかったですね。
彌永:私自身は油画専攻だったんですけど、「構想設計」という、メディアアートや写真を教えている専攻が京芸にあるんですが、そこの専攻出身の先生が油画専攻にもいて、その先生が評価してくださったんです。で、その時の映像からは本格的にデジタルを出していきました。
彌永:これの、額がないバージョンをプロジェクターで映した状態のものが最初に作った作品です。
福田:これはホームページか何か?
彌永:ホームページです。最初はプロジェクターで作品をいくつか映していったのですけど、プロジェクターとモニターとでは、光の感じが違うなと思ったんですよね。モニターで見ているものとは、どうしても違う見え方になってしまうんです。モニターで見えているままを映したかったんですけど。でも一方でそうすると、絵を描いているつもりなのに映像作品になっちゃうなとも思って。
福田:タブレットで描いていたものを映し出したら、ちょっと違う素材感になってしまった、ということですか。
彌永:そうですね。壁の素材感とか。
福田:だから彌永さんは、徹底して「素材が嫌」なんですね。そのままのものを見せたいという。
彌永:モニターに映っている感じがいいなと思って。それからモニターを額装というか……これも自分で作った枠なんですけど。周りが絵で、額縁はベニヤにアクリルガッシュや油彩で……。
福田:これはモニターもあるの?
彌永:中身がモニターです。
福田:このときのモニターは、テレビのモニターですか?
彌永:パソコンのモニターみたいなものですね。それに額縁を付けました。
福田:でも、それだと何個も買えないじゃないですか? モニターだから。
彌永:中古で、3000円~5000円くらいのパソコンのモニターだけを頑張って何個も買っていました。ネットの中古専門店とか、リサイクルショップのオンラインショップとか。
福田:そうなんですか! 中古でも、ちゃんと元データを再現できるモニターなんですか?
彌永:そうですね。
福田:じゃあ、ひとつの作品を映したら、そのモニターは1個で終わり、ということですよね。
彌永:はい。それに合わせて額を作っているので、一応それ専用の作品として。なので作品を売るときも、モニターと額はすべてひとまとめです。映像作品になると、データで売らなければいけなくなるので。
福田:「もの」で渡したい。
彌永:「1点もの」みたいな感じが自分は好きだから、そういう感じで渡せたらいいな、と。この額とモニターを付けて、データも付けてそれごと渡すスタイルにしていました。