「絵」が先か「フレーム」が先か
福田:大学院は2年ですか?
彌永:はい。大学を卒業したのが2016年です。
福田:これはもう最近の作品ですね。額が付いているから。
彌永:学部の卒業製作ですね。これは大きいモニターに頑張って貼りました。
福田:めちゃくちゃ精緻な、CGみたいな作品を描いていたんですね。結構、フレームですね。
彌永:フレームなんですけど、このときからリアルに描くことをやめるんです。最初は、そのときあったペイントソフトを使っていたんですけど。だけどリアルに描くと結局、油絵で描いたほうがいいじゃないですか。……油絵の質感を模倣したいみたいになっているなと感じて。「油絵をコマ撮りしているんですか?」と言われたこともありました。若い人が見たらそうは思わないと思うんですけど、年齢層の上の人からは「これは油絵をコマ撮りして作ってる絵なの? 映像なの?」みたいに言われたりして、(なんかちょっと伝わってないな)って。これはリアルに描くのではなくて、ドットが目立つように、あえて古いペイントツールを使ったほうが面白いんじゃないかなと思って。
福田:徹底して、ものが持っている素材感を排除していったわけだよね。
彌永:逆に、「質感がない」っていうのがデジタルの質感かな、みたいな。
福田:面白い。彌永さんの感覚が、とても面白いですよね。
彌永:この辺から、額縁はあるけどコピーを使いました。
福田:コピーというのは?
彌永:ここに同じものがあるんですけど。デジタルでしかできない、同じものをコピーして。あえて荒く描いたり。そういうことをちょっとやってたんですけど。
福田:このあたりの作品は、最近の感じに近づいていますよね。
彌永:このときは、頑張って大きいモニターとかも買いました。
福田:何インチくらいですか? これは。
彌永:95cmと書いてあるので約1mですね。あと、DMMが当時出していた一番安い4Kのモニターが5万くらいだったので、それを頑張って買いました。
福田:それはたしかに、頑張らないと、ですね。
彌永:バイトして買いました。あとこの辺は額縁キャンバスにしたりとか。額縁と絵の関係でいうと、絵が主体だったので、絵を描き終わってから額縁の周りを作る、みたいな。絵に合った額を作るという気持ちが当時はあったので。
福田:やっぱりこういうのがわかりやすいですよね。コピーしながら、油絵のテイストも残しながらもデジタルで表現している……混在となっているのがエネルギーを感じますね。
彌永:これはこれで気に入っていたんですけど、ずっと「絵と額縁」という状態で……。額縁は、「これを絵として見てほしい」というメッセージがちょっと強すぎる気もして。悪くはないんですけど。
福田:とにかく、気持ちはパンクですよね。みんなが思うようなことは壊したいという。魅力はそこだろうと思いました。
彌永:ありがとうございます。