ネットを経由した「リアル」を描く
福田:描く題材と自分の生活とか、社会の関わりを何か感じることはありますか? 強い社会的メッセージが欲しい!という意味ではなくて。自分のパソコンライフの中の世界観みたいなもの、でしょうか。
彌永:パソコンライフの世界観。そうですね…。モチーフはインターネット上から拾ってきている画像が多くて。最初はミュージシャンを描いていたんですけど、最近はプロのカメラマンが撮っているのではない、個人が携帯で撮った、それこそメルカリの出品用画像みたいな、なんならちょっとへたな写真が面白いなと思って描いています。それを自分なりに、もうちょっとキレイに描くみたいな。
福田:めっちゃ面白いですね。メルカリのへたな出品画像をうまく表現して描く。
彌永:「ネット上にある、膨大なイメージみたいものを拾ってきて描く」ということですね。ずっとパソコンで絵を描いてきたので、やっぱりモニター上でモチーフにしたい画像を開いて、横にペイントソフト開いて、見ながら描くみたいなことが多いです。自由にバーッと心象風景みたいなものを描くときもあるんですけど、そのときもネット上の画像を使うのが面白いなと思っています。
福田:彌永さんが見ているのは、ネットという、別の脳を経由したリアルの社会のひとつ、何かだということですね。
彌永:そうですね。キャラクターというのは今の時代だからあるものだし。100年前にはキャラクターの絵とかないと思うから。ネットだからこそ、個人の人が撮ったへたな写真もあるし。
福田:SNSとかそういうツールがないかぎり、個人の何かを発見すること自体無理だもんね。
彌永:そうですね。
福田:完成されたキレイなものしか見られないから。そういうものに何かを感じてしまう。メルカリだとかネットを通じてキャラクターを描くとか。
彌永:はい。なんか面白いなと思います。自分で撮った写真で気に入ったものがあれば、ちょっと儀式的に、1回ネットにアップします。ネットを経由させるという。これは、ネット上の画像にしたっていうことです。
福田:そうか。自分で撮ったものでもネット経由にするということですね。
彌永:あと、さっきのビデオチャットの画面とか、インターネット上にしかないイメージ、ネットを介さないと見ることができないイメージみたいなものも大事かなと思って。
福田:ビデオチャット、分かりやすいですよね。
彌永:それはそう思って描いているので、そういうものをモチーフにはしていますね。パソコンを持って、外で風景画描いていたら、なんだかおかしいじゃないですか。
福田:たしかに。
彌永:外の風景をiPadでお絵描きみたいな、そういうことをする人もいますけど、それは自分の感覚とはやっぱり違うので。自分はやっぱりずっと家に籠って、パソコン上の画面で画像を開きながら絵を描いていましたから。
福田:面白い。なんか、全然違う意味での引きこもりですよね。いい意味で。すごく開かれた世界がひとつの場所にいながらにして見れるという、現代にしかできないような表現方法で、いろんなアイデアをキャッチしているということですよね。これを世の中にうまく説明できたら、すごい大発見じゃないですか。
彌永:ありがとうございます。もうちょっとすっと言えるといいんですけどね(笑)。
福田:彌永さんの世界観、すごいと思いますよ。僕も長年アートをやっているけど、衝撃を受けたんです。だからこれは、すごいことになると思う。コロナが収束して、もし機会があったら僕のロサンゼルスのギャラリーにぜひ置かせてください。いずれにしろ、来年ロスでやりたいですね。
彌永:嬉しいです。ありがとうございます。